蘇生方法の勉強を頑張っていると必ずこのどちらかの言葉を目にします。今、あなたの覚えている手順、どちらのガイドラインの推奨ですか??
本日の議題はガイドライン。設立における過程には様々なサイドストーリーも多く、著名な方が見れば『その設立にはこういう背景がある!!』ですとか『設立した順番が違う!!』など、あるかもしれません。
βの独自解釈などもあると踏まえた上で御参考に。
ILCOR
ずっと以前。まだガイドラインがなかった時代から心停止になった人をどうにか生き返らせようと、できる限りの努力を行っていました。タバコの煙を肛門から入れたり、宙づりにしたり、馬の上に傷病者を乗せて走らせたり…。でも、助かりそうにないですよね?残念ながら想像通り、効果はありませんでした。エビテンス(根拠)がないものは廃れていきながら、人類はより効果のありそうな蘇生行為の模索を続けてきました。現代にかけて効果がある蘇生行為が明らかになってきましたが、世界中で統一した方法がありませんでした。そこでILCOR(International Liaison Committee On Resuscitation:国際蘇生連絡委員会 読み方:イルコア)が立ち上がり、AHA(アメリカ心臓協会)など各地域の蘇生のための協議会がILCORに加盟することとなりました。
日本はJRC(日本蘇生協議会)があり、RCA(アジア蘇生協議会)に属する形でILCORに加盟しています。このRCAはJRCがICLORに加盟するため、JRCが中心となってRCAを作ったようです。
ガイドライン
ILCORは2000年に最初のガイドラインとなるガイドライン2000を発表しました。AHAとの共同という形でした。この時は当時の言い方での心臓マッサージと人工呼吸の比率が15:2であり、電気ショックは連続3回行うというものでした。その後2005年にはILCORから国際コンセンサスCoSTR(読み方:コースター)が発信され、それぞれ加盟する協議会がガイドラインを作成しました。『そんなのガイドラインも世界共通でいいじゃん!!』という声も聞こえてきそうですが、それぞれの地域ではその地域でしか使われていない薬剤や身体の大きさへの考慮をしなければなりません。そのため、“世界で統一されたコンセンサスを使い、自分の地域に合わせたガイドラインの作成”というのは都合が良いことも多かったと考えられます。
5年毎の改訂
世界では常に最善の医療を求めて研究、解析が行われています。そこで効果があると認められた内容は、国際コンセンサスにも追加、もしくは改訂しなければなりません。しかし、1つ1つ変えてしまっては、いつ改訂されたコンセンサスが最新なのか、わからなくなってしまいます。そこで5年毎に国際コンセンサス(CoSTR)を改訂し、加盟する協議会はガイドライン2005、2010と作成するようになりました。現在ガイドライン2020が各協議会から発信されています。
AHAガイドラインとJRCガイドライン
国際コンセンサス(CoSTR)が2020年に発信したものをもとにアメリカ心臓協会が作成したものがAHAガイドライン2020、日本蘇生協議会が作成したものがJRCガイドライン2020です。根本は同じですから、まったく別物ではありません。AHAは国際的な要素が強くJRCは日本独自の要素があります。日本国内では、どちらのガイドラインに沿った行動を行っても間違いではないという考え方を用いています。(一部薬剤の使用などについては認可されていない場合があります。) 国内の講習会を受けてみると、JRCに関わる日本救急医学会が認定するICLSコースでもAHAガイドライン2020の要素を使用していることがあります。例えば、胸骨圧迫はJRCの場合、約5㎝が推奨されていますが、AHAでは少なくとも5㎝が推奨されています。ICLSコースで使用するテキストは問わないとなっており、ICLSコースを開催する団体がコーステキストを作成することもしばしばありますが、その内容において胸骨圧迫が“少なくとも5㎝”となっていることがしばしば見られます。それに対してAHAでは、AHA-BLS、AHA-ACLSなど認定されるコースでは必須のコーステキストが使用されるため、すべてAHAガイドライン2020の推奨が使用されています。
まとめ
ILCORの国際コンセンサスCoSTRに基づいて、それぞれの地域で作成されるガイドラインの中でAHAガイドライン2020とJRCガイドライン2020が日本では使用されています。
両方のガイドラインを熟読して、違いを見つけ出してみるのも面白いかもしれません。
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